ローマ初日 <よし坊ワナにかかる>
まだ4月2日
"Excuse me!"
声をかけられ、振り返るとスーツを着た40歳ぐらいの紳士と金髪美女が歩み寄ってきた。
よし坊「なんでしょうか?」
紳士 「これからトレビの泉に行くところなんですが、一緒に行きませんか?」
出た、トレビの泉!
これライトアップ絶対綺麗やろ!
怪しいと思いつつもトレビの泉を見るだけなら大丈夫だろうと思い、一緒に行くことにした。
彼は日本で合気道を習っていたこと、彼女はロシアからローマに観光で来たばかりで祖母が日本人であることを話していた。
イタリアとロシアのマフィアセットに連れられて、トレビの泉に向かった。
途中でおごってもらったジェラートを食べながら狭い路地を右に左に歩き続けると、急に広い空間に出た。
「あれがトレビの泉だよ!」
見ると、エゲツない人ごみ。
わらわらと物売りが近づいてくる。
彼はハエを払うように物売りをさばきながらドンドン奥に進む。
「ここからが一番綺麗に見えるよ。写真撮るかい?」
うっわ…
想像以上にステキ!!
夢中でシャッターを切るよし坊。
すると突然、
「ホテルはどこに泊まってるの?」
と聞いてきた。
あ、これは教えたらアカンやつや。
とっさにホテルから少し遠い場所を伝える。
「じゃあ、そこまで送っていくよ。骸骨寺って知ってる?もう閉まってるけど、途中にあるから前を通っていこう。」
骸骨寺という旅人の興味をそそるワードを巧みに使い、翻弄されるよし坊。
ほう、これが骸骨寺か…
ここに無数の骸骨が入っていると思うと不気味だ…。
でも興味をそそられるので今度行ってみよう。
目的地に向かう途中でしきりに飲みに行こうと誘われるが、これはさすがにマズいので駅に着いたらそのまま帰ろうと決心する。
目的地に到着。
「ありがとう、楽しかったよ。」
手を振って帰ろうとすると、
「イタリアではこういう時は付き合うのが礼儀だよ。ちょっとだけでもいいから付き合ってくれよ。」
礼儀と言われて動揺するよし坊。
「じゃあ、ちょっとだけなら…。」
その瞬間、悪魔の口が開いた。
路地裏に入り、地下に続くあやしい階段を降りると、
場末のスナックのような空間。
猛禽類がワナにかかった気持ちはこんな感じかな。
ゴツいおっさんたちが完璧に配置されているので、お金を払わないと絶対出られそうにない。
ルーマニア出身の女の子、ナポリから来たというあやしげな歌手など次々と登場する。
そして運ばれるアルコール。
お会計は、
990ユーロ
ありがとうございます!
もう帰らせていただきます!
店を出て後ろから"My friend!"と呼びかける声を無視して、路地裏を足早に駆け抜けた。
ローマの長い一日が終わろうとしている。
もう2度とダマされないぞと心に誓いながら宿に帰っていった。