パリ<よごれちまった悲しみに>後編
4月28日
本日の予定
- ルーブル美術館 ←済
- オルセー美術館
- オランジュリー美術館
- ロダン美術館
- ノートルダム大聖堂
ルーブル美術館を出たあと近くの定食屋でカレーライスを食べた。
たまたまその定食屋に日本の大学教授が食べに来ていて、一緒にいたフランス人の教員の背中に見事な日本の入れ墨が入っていると紹介していた。
同じ定食屋でも日本の「松屋」などではこのような光景はなかなか見られないだろう。
さすが芸術の都「パリ」である。
カレーライスを空きっ腹に流し込みオルセー美術館に向かった。
オルセー美術館の建物はもともと1900年パリ万博の時につくられた駅舎だった。
駅を美術館にするなんてなかなかシャレている。
さすが芸術の都「パリ」である。
ちなみにパリには3大美術館(ルーブル美術館、オルセー美術館、ポンピドゥー・センター)があるが、これらは所蔵作品を年代で区切っている。
おおざっぱに言うとルーブル美術館は19世紀以前、オルセー美術館は19世紀、ポンピドゥー・センターは19世紀以降という分類だ。
オルセー美術館に到着。
出発進行!
確かに駅という感じがする。
駅の時計にしてはかなり立派だなあ。
さっそく絵画から鑑賞する。
ミレーやゴッホ、モネなどの有名絵画が多数展示されていた。
ミレーの「落穂拾い」
実は彼女たちはこの土地の小作人ではないらしい。
彼女たちは食べるものがない貧しい人たちで、収穫後に落ちた穂を拾ってその日の糧にしているのである。
旧約聖書のレビ記にもこう記されている。
「穀物を収穫するときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。…これらは貧しい者や寄留者のために残しておかねばならない。」
「絵画を読む」という本があるが、背景を知った上で鑑賞するとひとつひとつの作品が見る者に雄弁に語りかけてくる。
絵画だけでなく彫刻も素晴らしい作品がたくさん展示されていた。
すごい迫力!
映画のワンシーンのようだ。
オルセー美術館は2月革命から第一次世界大戦(1848年〜1914年)までの作品を扱っているだけに、激しい時代のうねりの中から新しいものが萌芽する息吹が感じられた。
小ぶりの美術館だったがこれぐらいの方がじっくり鑑賞できてよかった。
次にオランジュリー美術館に向かう。
テクテク…
テクテク…
テクテク…
気持ちよく歩いていると突然ロマ(ジプシー)の少女たち3人ほどが近づいてきた。
「寄付をお願いします!サインしてください!」
とお決まりのフレーズでボードを突き付けてきた。
これはよくある詐欺の手口なので相手にしないで素通りをしようとしたら、ものすごい勢いでガンガン体当たりしてきた。
強引に財布を盗ろうとしているのだろうが、ここまで攻撃的なロマは初めてだった。
おそらくノルマが達成できないと彼女たちもヒドイ目にあうのだろう。
パリという街は華やかな反面こうした闇の部分も深いように感じた。
オランジュリー美術館に到着。
この美術館はもともとテュイルリー宮殿の一部だったが、モネの「睡蓮」の連作を収めるために美術館として整備された。
モネ以外にもピカソやゴーギャン、ルノワールなどの絵画も展示されている。
おじゃまします!
「睡蓮」の絵がパノラマに展示されている。
日本の直島にある「地中美術館」にもモネが展示されているが、それよりもはるかに規模が大きい。
文字通り絵の中にいるような感覚が新鮮だった。
皆公園でくつろぐように真ん中で座ったりして思い思いにモネの世界を楽しんでいた。
次にロダン美術館に向かったが、残念ながら閉館していた。
庭には入れたので野外に展示されていた作品を鑑賞する。
有名な「地獄門」だ。
同じ作品は日本にも東京の国立西洋美術館にあり、世界に7作品展示されている。
「地獄門」の群像の一つ。
地獄門の一番上に位置している。
この有名な「考える人」も「地獄門」の群像の一つ。
門の上から地獄に入る人の群れを見つめている。
「カレーの市民」
僕はこの作品の背景を知ってとても感動した。
時は1347年、百年戦争の時代。
イギリス王がフランスのカレーを包囲した際、フランス王はこれを死守せよとカレー市民に命じた。
フランス軍もカレーを何とか救出しようとするも作戦は失敗。
一年以上もの長い間イギリス軍による兵糧攻めに苦しみ耐えるカレー市民を見かねて、市民の幹部6人が決起し自らの命と引き換えに市民を助けて欲しいとイギリス軍に交渉した。
その要求が受け入れられ、幹部6人が敵軍に投降。
その時の6人のやせ細った身体と死を覚悟した表情、そして英雄的自己犠牲の精神が作品に表現されている。
ちなみに右の男性は城門の鍵を持っている。
その鍵ひとつに市民すべての命の重みがかかっていると思えば、心にとても迫るものを感じた。
ロダンの傑作がこんなに野ざらしで展示されていることに驚いたが、人でゴミゴミした美術館から解放されて自然の中で鑑賞できるのは逆に素晴らしいことだと気が付いた。
この時は幸いにして人が少なく、気が済むまでゆっくりと鑑賞できた。
次はノートルダム大聖堂に向かった。
ノートルダムとはフランス語で「我らが貴婦人」という意味で聖母マリアを指すという。
たくさんの天使が迎えてくれる。
近くで見るとものすごく装飾が細かい。
教会に入る。
非常に天井が高く、広い空間だ。
大聖堂には9,000人収容できるという。
教会内を見学しているとミサが始まった。
ここはナポレオンの戴冠式やジャンヌ・ダルクの審判などが行われ、まさにフランスの歴史の舞台として重要な役割を果たしてきた場所だ。
そう思うと目の前の景色がより一層歴史の重みをともなって感慨深く感じられた。
今日パリという街を散策して、華やかな面と汚れちまった面の両方を見た思いがしたが、逆にそれらを通して清濁併呑併せ持つフランスの歴史の深さ、大きさを少しだけ垣間見れたように思う。
明日はヴェルサイユ宮殿に出張します!