ローマ初日 <木こりと革ジャン>
4月2日
階段を上がり呼び鈴を押すと、木こりのような大柄なおじさんが出迎えてくれた。
中はこじんまりしているものの、
メルヘンチックで可愛らしい雰囲気だった。
おじさんの案内でキッチンに通される。
おじさんが説明するところによると、彼はここで部屋を借りているただの住人でホテルのスタッフではないらしい。
これからホテルの管理人を呼ぶからそれまで待っていて欲しいとのこと。
親切にもコーヒーを淹れてくれ、クッキーまで出してくれた。
さっきまでの不安と緊張が、
コーヒーに混ざり合うミルクのように溶けていった。
管理人を待つ間おじさんと話をした。
おじさんはベルリン出身で仕事の関係でローマに来たとのこと。
僕はこの旅でベルリンにも行くのだと伝えると、「ベルリンは良いところだからぜひ楽しんでおいで」と故郷を懐かしむような優しい笑顔で話してくれた。
しばらくしてハーレーのようなバイクのエンジン音が聞こえたかと思うと、近くで止まった。
「来たようだね。」
おじさんは管理人を迎えに行くために玄関に向かった。
勢いよくドアが開くと、革ジャンに身を包んだスタイリッシュな女性が入ってきた。
「すみません、遅くなって!」
と、しきりに革ジャンが謝り、僕も
「こちらこそお電話せずにすみません!」
と応じ、一通りお詫びのキャッチボールが終わると、部屋の案内が始まった。
通された部屋はこれまた可愛らしいお部屋。
キッチンとシャワールームは共用だと説明を受ける。
地図を見せながら「バスの乗り方と路線の説明」「観光名所の場所までのルート」「おすすめのレストラン」などを地図に書き込みながら説明してくれた。
なんと言うか、
優しすぎて感動した。
アモーレ、革ジャン!
さっそく部屋に荷物をおろして、シャワーを浴びる。
さっぱりしてベッドに横になって天井を眺めているといろんな生活音やイタリア語のおしゃべりが風にのって聞こえてくる。
遠くまで来たんだなとしみじみと実感した。
このまま寝るにはまだ時間が早かったので、ちょっと散歩に出ることにした。
ローマの悪魔が口を開けて待っているとは知らずに…。
つづく